日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会ホームページへようこそ

日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会

学術情報

ホーム > 学術情報 > 訪問看護師のためのストーマケア講習会用GIO SBOs

訪問看護師のためのストーマケア講習会用GIO SBOs

訪問看護師のためのストーマケア講習会を開催していただくために

各地域で、訪問看護師のためのストーマケア講習会を開催していただくために講習会委員会からの依頼で「訪問看護師のためのストーマケア講習会用GIO・SBOs」をこの度、教育委員会が作成いたしました。
訪問看護師の皆様は1~2日の講習会ならば参加しやすいとのご意見もあり、8~10時間程度の時間数で開催できる内容とし、講習会委員会の山本由利子委員長や澤井尚子委員のアドバイスおよび学会理事会の確認を経て、完成に至りました。
是非とも地域の皆様にご活用いただき、さらに洗練させていくために、皆様の忌憚のないご意見などお寄せいただけましたら、幸いです。

2023年6月
日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会理事会
教育委員会委員長 南 由起子

訪問看護師のためのストーマケア講習会用GIO・SBOs  2023年5月完成版

講習会の目標:ストーマ保有者が安心して日常生活がおくれるようにするために、ストーマリハビリテーションの基礎的能力(知識、技術、理念)を修得する。

GIO 1 ストーマ造設を受けた患者とその家族に対し身体的・心理的・社会的な面からのケアができるためにストーマケアとストーマリハビリテーションの基礎知識を正しく理解する。
SBOs
1-1. ストーマとはなにかを説明できる。
1-2. ストーマが患者のボディイメージに及ぼす影響を説明できる。
1-3. ストーマ造設に伴う患者の心理的状態の変化の概略を説明できる。
1-4. ストーマケアにおけるキーパーソンの役割を説明できる。
GIO 2 各種の消化管ストーマに応じたケアができるためにストーマならびにそれらが造設される疾患と管理に関する基礎知識を正しく理解する。
SBOs
2-1. 消化管ストーマが造設される主な疾患*1を列挙できる。
*1 直腸がん(大腸がん)、炎症性腸疾患(CD,UC)、大腸憩室炎、放射線性腸炎、女性性器がん、家族性大腸腺腫症、放射線性腸炎、縫合不全(予防、治療)、他臓器がんの転移・再発、外傷
2-2. *1の疾患で消化管ストーマを造設する理由*2を説明できる。
*2 肛門を切除する場合、便を肛門側に流したくない場合
2-3. 消化管ストーマの種類*3,4,5を説明できる。
*3 期間による分類(一時的ストーマ、永久的ストーマ)
*4 ストーマ部位(造設臓器)による分類(結腸ストーマ、小腸ストーマ)
*5 形態による分類(単孔式ストーマ、双孔式ストーマ、ループ式、分離式)
2-4. 消化管ストーマの構造の概略について説明できる。
2-5. 各種消化管ストーマの特徴に応じたケアの留意点*6を説明できる。
*6 消化器系・尿路系の違い、消化管ストーマにおける使用腸管による排泄物の違いなど
GIO 3 尿路ストーマのケアが適切にできるために尿路ストーマならびにそれらが造設される疾患と管理に関する基礎知識を正しく理解する。
SBOs
3-1. 尿路ストーマが造設される主な疾患*7 を列挙できる。
*7 膀胱がん、周囲臓器疾患の浸潤、他臓器がんの転移、外傷、放射線性膀胱炎など
3-2. *7の疾患に尿路ストーマが必要となる理由を説明できる。
3-3. 尿路ストーマの種類 *8 *9を列挙できる。
*8 腎瘻、尿管皮膚瘻、膀胱瘻、回腸導管
*9 自排尿型尿路変更
3-4. 各種尿路ストーマの特徴を説明できる
GIO4 適切にストーマ装具を利用できるために、ストーマ用品の基本的構造と機能を理解する。
SBOs
4-1. ストーマ装具の基本的な構造を述べることができる。
4-2. 皮膚保護剤の成分、材型について列挙できる。
4-3. 皮膚保護剤の作用機序について述べことができる。
4-4. 代表的なストーマ袋の特徴を述べることができる。
4-5. 各種ストーマ袋の使用上の留意点を述べることができる。
4-6. ストーマ用品の入手方法(購入量も含む)、保管方法について述べることができる。
GIO 5 在宅でのストーマケアが適切にできるためにストーマ用品取り扱いの基本的技能を修得する。
SBOs
5-1. ストーマ保有者の個々の状況(腹壁、装着能力:末梢神経障害や化学療法による手足症候群などによる変化、生活状況など)に合わせたストーマ用品の選択基準を述べることができる。
5-2. ストーマ用品の交換に必要な物品を準備できる。
5-3. 皮膚保護剤*10を適切に使用できる。
*10 板状皮膚保護剤、粉状皮膚保護剤、練状皮膚保護剤、用手成形皮膚保護剤
5-4. ストーマ装具を適切にはずすことができる。
5-5. 個々のストーマに合わせて面板ストーマ孔を切ることができる。
5-6. ストーマ装具を適切に装着できる。
5-7. 必要に応じて補助用品*11を使用できる。
*11 固定具、脱臭剤、脚用集尿器、袋カバー、便排出口閉鎖具、尿排出口閉鎖具
GIO6 ストーマ粘膜の異常やストーマ周囲皮膚障害に対して適切に対応できるために、ストーマ粘膜の取り扱い及び予防的・治療的スキンケアの意義と方法について説明できる。
SBOs
6-1. ストーマ粘膜の観察ポイントと取り扱いの留意点を説明できる。
6-2. ストーマに関連した皮膚の構造と機能(含ストーマ装具装着による閉塞性環境下での変化)について説明できる。
6-3. 予防的・治療的スキンケアについて説明できる。
6-4. ストーマ周囲皮膚障害の原因*12を列挙することができる。
*12 排泄物、皮膚保護剤のアレルギー、感染、化学療法、放射線療法、皮膚疾患
6-5. ストーマ周囲皮膚の観察要点を述べることができる。
6-6. ストーマ周囲皮膚障害の対策について説明できる。
6-7. ストーマ周囲の状況*13に応じた皮膚保護剤の適切な使用方法について説明できる。
*13 陥没、びらん、潰瘍など
6-8. 絆創膏皮膚炎について説明できる。
GIO7 在宅での経過が順調であるかどうかを判断し適切に対処できるために消化管・尿路ストーマ合併症について理解する。
SBOs
7-1. 消化管ストーマの皮膚障害以外の合併症*14を列挙し、その原因の概略と対策について説明できる。
*14 壊死、狭窄、陥没、膿瘍、腸脱出、傍ストーマヘルニア、出血
7-2. 尿路ストーマの皮膚障害以外の合併症*15を列挙し、その原因の概略と対策について説明できる。
*15 尿路の各種通過障害、尿路感染症、腎不全、尿路結石など
7-3. ストーマからの出血を来す病態*16を列挙し、その原因の概略と対策について説明できる。
*16 装具による損傷、ストーマ静脈瘤、ストーマに発生したがん、ストーマより口側腸管の出血性病変
7-4. 在宅にて自分で合併症に対処できなくなった時(管理が困難になった時)の対応策*17を述べることができる。
*17 相談窓口(ストーマ外来や関連病院の相談可能な皮膚・排泄ケア認定看護師、ストーマ認定士など)、連絡方法、家族への説明、ストーマケアの専門の研修を受けた看護師による同行訪問(在宅患者訪問看護・指導料)などの医療保険制度の利用
GIO 8 在宅におけるストーマ保有者と家族を効果的に支援するために、ストーマ保有者の抱える社会的、職業的、経済的問題についての対応を理解する。
SBOs
8-1. ストーマ保有者が活用できる社会資源*18を列挙できる。
*18 身体障害者福祉法、年金法、生活保護法、医療保険制度、介護保険制度、難病法、自治体による助成、社会適応訓練事業
8-2. 社会資源を活用するための手順の概略を説明できる。
8-3. 地域支援システムの内容と利用方法について説明できる。
8-4. 在宅におけるストーマケア支援のために介護保険と医療保険で活用可能な支援内容を説明できる。
8-5. ストーマ保有者の互助組織について説明できる。
GIO9 継続的なストーマケアを安全に提供するために、感染対策やケアにおけるリスクを理解し、ストーマ保有者の不安に配慮しながらストーマケアを提供する能力を身につける。
SBO s
9-1. ストーマケアの場で、標準予防策、感染経路別予防策を遵守でき、必要に応じて説明できる。(含む化学療法中の排泄物の取り扱いなど)
9-2. 皮膚保護剤を用いた排尿・排便法で危険な自己管理につながる行為を回避するように指導できる。
9-3. 緊急に病院に連絡すべき、手術やストーマの合併症と症状をストーマ保有者や家族に指導できる。
9-4. 地域のごみ処理のルールと医学的な感染対策が両立する装具の廃棄方法を立案できる。
9-5. ストーマ保有者が大規模災害に向けて心がけるべき点*19を列挙できる。
*19 ストーマ用品の非常用持ち出し、備蓄、ストーマ用品の支援物資、無償提供と受け取り方法について緊急の連絡先(病院、販売店)ストーマタイプなどのチェックリスト、地域での災害対策について
JSSCR(日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会)、JOA(日本オストミー協会)、OAS(ストーマ用品セフティーネット連絡会)の三者の災害対策の連携について
9-6. 安全な継続的ストーマケアのためにストーマ外来や多職種連携が重要であることを説明できる。
GIO10 ストーマ保有者が終末期を迎えた場合に適切に対処するために、終末期ストーマ保有者の身体的、局所的状況や心情を理解し、対象者にあった生活を支援する能力を身につける。
SBOs
10-1. ストーマ保有者の終末期ケアに用いる装具を選択・購入するときの留意点を述べることができる。
10-2. ストーマ保有者の終末期に見られることが多いストーマの合併症とその対策を述べることができる。
10-3. ストーマ保有者の終末期の身体的変化(全身・局所)を類別できる。
10-4. ストーマ保有者が持つ終末期の不安に適切に対応できる。
10-5. 死去後のストーマの処置法の選択肢を述べることができる。

★以上の「訪問看護師のためのストーマケア講習会GIO・SBOs」は、引用・参考文献1,の表1「在宅看護師のためのストーマケア講習会GIO・SBOs」を引用し、JSSCR教育委員会が一部加筆し改変した。

引用・参考文献

1.柴崎真澄、熊谷英子、舟山裕士他,在宅看護師のためのストーマケア講習会の開催と今後の課題,日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌,38:3,163-176,2022.
2.松原康美,小林和世,柴崎真澄他,訪問看護におけるストーマケアの困難性と専門知識をもつ看護師の同行訪問の有用性に関する全国実態調査,日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌,38:2,29-38,2022.
3.小林和世,積美保子,賀屋仁他,在宅ストーマ患者に関する訪問看護ステーションへのアンケート調査,日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌,33:3,81-86,2017.
4.日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会講習会委員会作成,ストーマリハビリテーション基礎講習会GIO・SBOs 第8版,学会ホームページ,2018年2月.